面白かった記事:「Jane Streetはヘッジファンドだ、マーケットメイカーと呼ぶのはやめろ」
自分が投稿する先としてはSubstackは卒業したけど、購読者としてはまだまだ多くのPublicationを購読中です。
難解な内容だったり、自分が良く知らない業界の話については、Claudeに解釈してもらいながら読んだりしているのですが、そのClaudeとのやり取りが面白かった場合や、記事そのものが面白かった場合などもここで投稿していきたいと考えています。
(自分の勉強ログも兼ねています)
「Jane Streetはヘッジファンドだ、マーケットメイカーと呼ぶのはやめろ」
元記事はこちら:
https://rupakghose.substack.com/p/jane-street-is-a-hedge-fund-stop
- 原題:“Jane Street is a hedge fund, stop calling it a market maker”
- 筆者:Rupak Ghose
- 途中まで無料、後半有料記事
要約
Jane Streetが2026年7月に150億ドルという巨額の取引損失を出したことを受け、著者はJane Streetを「マーケットメイカー」と呼ぶのは不適切であり、実態は「ヘッジファンド」だと主張している。
年初来では400億ドルの収益を上げており、7月損失を含めてもなお驚異的なリターンを記録している。
損失の約半分は、Situational Awarenessへの25億ドルの投資がピーク100億ドルから30億ドルに急落したことに起因する。
Jane Streetは今週146億ドルの借り換え・新規起債を行い、プライバシー確保のためプライベートクレジット市場に移行したが、損失情報は結局リークされた。
記事は、マーケットメイキング収益だけではJane Streetの規模を説明できなくなっていること、リスクアペタイトがかつてのマクロヘッジファンドのように高まっていることを詳細に論じている。
(※有料部分の一部は読み取れていません)
キーポイント
7月に150億ドルの取引損失
- しかし年初来では400億ドルの収益を達成。
- 月次での損失は過去10年で初めて
損失の約半分はSituational Awarenessへの投資
- 25億ドルの投資がピーク100億ドルまで上昇後、
- 7月末に30億ドルまで下落
マーケットメイキングだけでは説明できない規模
- 米国ETF市場シェア20%超、株式オプション・現物株式で10%を持つが、400億ドルの収益はマーケットメイキングの枠を超えている
146億ドルの債務借り換え・拡大
- 損失額とほぼ同額の資金調達を実施。
- S&Pとフィッチは、強力な内部留保成長を根拠にレバレッジ水準は抑制的と評価
プライバシーへの執着
- プライベートクレジットへの移行はプライバシー確保が目的だったが、損失情報は漏洩。
- 年間2億ドル超の追加金利コストは「収益の約1日分」に過ぎない
Citadel Securitiesとの比較
- Citadelのヘッジファンド部門が1ヶ月で20%の損失を出しつつ、Securities部門が利益ゼロということは考えにくく、Jane Streetはより「ハイオクタン」な存在
Claudeとのやりとり
私:「マーケットメイカー」って…??Citadel以上のクラスのこと??Goldmanとか??
Claudeの回答:
マーケットメイカーとヘッジファンドの違いを整理すると、この記事の主張がクリアになると思います。
マーケットメイカー(Market Maker)
- 金融市場で常に買値と売値の両方を提示して、他の市場参加者がいつでも売買できるようにする業者のことです。
- 利益の源泉は「スプレッド」(買値と売値の差)で、方向性のある賭け(「上がる」「下がる」)をするのではなく、取引の仲介役として薄い利ざやを大量に積み上げるビジネスモデルです。
ヘッジファンド
- 自分の資金(やLPの資金)を使って方向性のあるポジションを取り、相場の変動から利益を得ようとする投資ファンドです。
この記事で出てくるプレイヤーを整理すると:
伝統的マーケットメイカー(ノンバンク系)
- Citadel Securities、Virtu、Optiver、IMC、XTX、HRTなど。
- Jane Streetもここに分類されてきた。
投資銀行(ゴールドマン等)
- かつてはマーケットメイキングの主役だったが、2008年金融危機後の規制強化(ボルカー・ルール等)で自己勘定取引が制限され、上記のノンバンク系に市場シェアを奪われた。
- 記事中のクレジット取引で「銀行のランチを食べている」という表現がまさにこれ。
ヘッジファンド
- Citadel LLC(Ken Griffinのヘッジファンド部門、Citadel Securitiesとは別法人)、Millennium、D.E. Shawなど。
著者の主張のキモは、Jane Streetが名目上はマーケットメイカーだが、実態はもはやヘッジファンドに近いということです。根拠として:
- 年初来400億ドルの収益は、マーケットメイキングのスプレッド収入だけでは説明がつかない
- 7月に150億ドルの損失を出すということは、巨大な方向性ポジション(directional bets)を取っている証拠
- Situational Awarenessへの25億ドル投資のようなVC的な賭けもしている
- Citadel Securitiesですら1ヶ月で20%の損失は考えにくい
つまりGoldmanとの比較というよりは、「Jane StreetはCitadel Securitiesのような純粋なマーケットメイカーの枠を超えて、Citadel LLC(ヘッジファンド)的な存在になっている」 というのがこの記事の趣旨です。
マーケットメイカーとヘッジファンドの両方を内包しつつ、そのリスクテイクの規模が歴史的なマクロヘッジファンド(ソロスやスタンレー・ドラッケンミラーの時代)を彷彿とさせる、と。
私:なんだかややこしい。。
マーケットメイカーの方が、力が強いわけじゃないんだ…?
ヘッジファンドの方が強力ってことだろうか。。
あ、あと良かったら次いでにPrivate Equityの違いも教えてほしい。。
Claudeの回答:
「力が強い・弱い」というよりは、ビジネスモデルが根本的に違うんですよね。
たとえるなら:
マーケットメイカー
- 両替所の店員。
- ドルと円の交換に応じて、その差額(スプレッド)で儲ける。
- 自分が「ドルが上がる!」と賭けてるわけじゃない。
- 取引量が膨大なので利益も大きいけど、1件あたりは薄利。
- リスクは比較的低く、収益は安定的。
ヘッジファンド
- プロのギャンブラー(語弊はあるけど)。
- 「ドルは上がる」「この株は下がる」と自分の分析に基づいて方向性のある賭けをする。
- 当たれば莫大な利益、外れれば巨額損失。
- Jane Streetが7月に150億ドル吹き飛ばしたのはまさにこれで、マーケットメイカーのスプレッド収入だけではこんな損失は構造的に起きにくい。
プライベートエクイティ(PE)
- 会社そのものを買う人たち。
- 上場企業を非公開化したり、未上場企業を買収して、経営改善やリストラをして数年後に高く売る。
- Blackstone、KKR、Apollo、Carlyleなどが代表格。
- ヘッジファンドが「市場で売買する」のに対して、PEは「会社を丸ごと買って中身をいじる」イメージ。
- 投資期間も5〜10年と長い。
整理すると:
| 何をするか | リスク | 時間軸 | 代表例 | |
|---|---|---|---|---|
| マーケットメイカー | 売買の仲介 | 低〜中 | 秒〜日 | Citadel Securities, Virtu |
| ヘッジファンド | 相場に賭ける | 高 | 日〜年 | Citadel LLC, Millennium |
| PE | 会社を買って改善 | 中〜高 | 年〜10年 | Blackstone, KKR |
…と書いておいてアレですが、現実にはこの境界がどんどん曖昧になっていて、それがまさにこの記事の論点です。
Jane Streetは「マーケットメイカーです」と言いながら実態はヘッジファンド的なリスクを取っている。
Apolloのような大手PEもクレジット市場でヘッジファンド的なことをしている。
Blackstoneも不動産だけじゃなくあらゆるものに手を出している。
だからこそ著者は「もうマーケットメイカーって呼ぶのやめろ」と言っているわけですね。看板と中身が違うぞ、と。
「もうマーケットメイカーって呼ぶのやめろ」
Jane Streetは「マーケットメイカーです」と言いながら実態はヘッジファンド的なリスクを取っている
ということは、Jane Streetって出自的にはマーケットメイカーだったってこと??
確か、クォンツ集団だったよね??HFTというか、アービトラージで利ザヤをとる手法だったっけ?
だからマーケットメイカー扱いだったって感じなのかな。。
Claudeの回答:
その理解でほぼ合っています。
Jane Streetは2000年にニューヨークで設立されて、最初はまさにETFのマーケットメイカーとしてスタートしています。
ETFの市場価格と、その中身(構成銘柄のバスケット)の理論価格との間に生じる微小なズレを捉えてアービトラージする、というのが原点です。
これはまさにクォンツ的な仕事で、高速な計算とモデリングで「本来こうあるべき価格」と「実際の市場価格」のギャップを見つけて、そのズレが解消される前にサヤを取る。方向性の賭け(「市場が上がる」「下がる」)ではなく、構造的な価格の歪みを刈り取るビジネスなので、リスクは相対的に低く、収益も安定的。
だから「マーケットメイカー」というラベルがぴったりだったわけです。
そこから段階的に拡大していった流れをざっくり言うと:
**ETFアービトラージ
→ 複数資産クラスのマーケットメイキング(株式、オプション、債券、クレジット)
→ 方向性のある自己勘定取引(プロップトレーディング)
→ VC的投資(Situational Awarenessへの25億ドル出資など)**つまり出自はまさに「クォンツ集団がアービトラージでスプレッドを取る」純粋なマーケットメイカーだったのが、あまりに稼ぎすぎて資本が膨れ上がり、マーケットメイキングだけでは資本を有効活用しきれなくなった。
記事の中で著者が「マーケットメイキングのパイはJane Streetには小さすぎるかもしれない(The flow market making pie may be too small)」と書いているのがまさにそれです。
結果として、余剰資本で方向性のある大きな賭けに出るようになり、実質的にヘッジファンド化した。
でも対外的には「我々はマーケットメイカーです」という看板を掲げ続けている。
著者が苛立っているのはそこで、「年初来400億ドル稼いで7月に150億ドル吹き飛ばすマーケットメイカーなんて存在しないだろう」と。
ちなみにJane Streetが採用面で有名なのも出自と関係していて、数学オリンピックやプログラミングコンテストの上位入賞者を積極的に採用し、面接でもポーカーやパズル的な確率問題を出すことで知られています。
もともとの文化が「数学的に市場の歪みを見つける集団」だったことがよく表れていますね。
私:
「年初来400億ドル稼いで7月に150億ドル吹き飛ばすマーケットメイカーなんて存在しないだろう」と
笑ってしまった(笑)
なるほど。
ちょっと(というかだいぶ)ズレるかもしれないけど、、、、「StripeやWise(Wise Transfer)が、決済システム屋さんをやっていたのに、そのうちヘッジファンドみたいなことをするようになっちゃった」みたいなお話、、という感じかな。。
Claudeの回答:
面白いたとえですね!
方向性としては結構いい線いってると思います。
共通しているのは
大量の資金が通過するインフラを持っている
→ 資本が蓄積される
→ その資本をもっと攻めた使い方に振り向け始めるという構造です。
Stripeは実際に企業向け融資(Stripe Capital)や財務管理(Stripe Treasury)に進出していて、単なる決済パイプから金融プラットフォームへと拡張しつつあります。
ただ、ニュアンスの違いがあるとすれば:
- StripeやWiseの場合は「インフラの上に金融サービスを積み上げている」感じで、決済の延長線上にあるものが多い。
- 融資も、Stripeを通じた売上データを持っているからこそできる与信判断で、本業との相乗効果がある。
Jane Streetの場合はもっと劇的で、「ETF市場の両替所をやっていたはずが、いつの間にか自分の資金で相場に巨額の賭けをするようになり、挙げ句にAI企業に25億ドル突っ込んでいる」という話です。
本業との相乗効果というよりは、稼ぎすぎて資本の使い道がマーケットメイキングの枠に収まらなくなった、という感じ。
もしStripeで無理やりたとえるなら、「Stripeが決済手数料で年間数兆円稼いだ結果、その利益でAI企業の株を大量に買ったり、為替市場で方向性のある賭けを始めたりして、ある月に数兆円吹き飛ばした」くらいのインパクトですかね。
さすがにStripeがそれをやったらみんな「おいおい決済屋さんじゃなかったのか」ってなりますよね。
著者が言いたいのはまさにそういうことです。
原文(再掲):https://rupakghose.substack.com/p/jane-street-is-a-hedge-fund-stop
金融ゴシップ的なお話が好きなので、RupakのPublicationは購読して読んでいます。 金融業界の裏側・裏話をよく投稿してくれるので、面白いです。